魚座の言葉
はるか昔、中学時代の担任は東大の英文科卒でバリバリの学生運動経験者だった。
その先生からディベートをすることを中学にいる3年間で学んだ。
自分の思ったことを言葉にすること、人の意見を聞いてその言葉を自分に取り込み、消化して、
自分の考えと照らし合わせて、再考して、新たな発見を自分の考えに上書きして、また自分の言葉にして発していくこと、
そんな訓練をしてくれたのだ。
思索することを教えてもらったのは、何ものにも代えがたいその先生からのギフトだったと思う。
その後の成長過程で密度は違えども、教えを乞うた師となる大人に数名出会える幸運を頂いた。
それから何十年も経ち、自分はすっかり中年になった。中年が学生だった頃の先生方はみんな天国へ旅立たれてしまった。
人生は厳しい、年を重ねたからといって智恵がついているわけではない。まだまだ教えてほしいことが山ほどあるのに、
今、教えてくれる先生は誰もいない…
と、思っていたのだが、それは早計だった。
今のネット時代を憂う人がいるけれど、なかなかどうして。
今まで目にすることの出来なかった洋書の古書をダウンロードできたり、
知の巨人のサイトから唸るほどの知の情報を無料で享受することができたり、
見ず知らずの才能のある若い人たちの思索に触れたり、
世の中にいる万人が、画面を通して教えてくれるのだ。素晴らしい。
良い時代だなぁ。
プラトンの『パイドロス』の中でお気に入りのソクラテスの言葉がある。
「ひとがふさわしい魂を相手に得て、
ディアレクティケー(対話法)の技術を用いながら、
その魂の中に言葉を知識とともにまいて植えつけるときのことだ。
その言葉というのは、自分自身のみならず、これを植えつけた人をもたすけるだけの力をもった言葉であり、
また、実を結ばぬままに枯れてしまうことなく、
一つの種子を含んでいて、その種子からは、また新なる言葉が新なる心の中に生まれ、
かくてつねにそのいのちを不滅のままに保つことができるのだ」
終活を考える世代の中年宙女でも、ネットを通して受けた言葉、新しい種子を心に植えることができる。
言葉を司るのは水星。今占星術的番地でいうと水星は魚座にいる。魚座のキーワードは「I believe」
言葉の力を信じたい。